2011年2月28日月曜日

25. 日本の詩人の系譜:与謝野晶子 “君死にたもうことなかれ”

25. 日本の詩人の系譜:与謝野晶子“君死にたもうことなかれ”
(旅順の攻囲軍にある弟宗七を嘆きて)

    ああ、弟よ、君を泣く、 君死にたまふことなかれ
   末に生まれし君なれば  親のなさけは勝りしも
      親は刃を握らせて  人を殺せと教へしや、
    人を殺して死ねよとて  二十四まで育てしや

               中  略

     ああ、弟よ、戦ひに   君死にたまふことなかれ
     過ぎにし秋を父君に   おくれたまへる母君は、
    嘆きのなかにいたましく   我子を召され、家を守り
    安しと聞ける大御代も   母の白髪は増りぬる

   暖簾の陰に伏して泣く   あえかに若き新妻を
   君忘るるや、思へるや   十月も添はで別れたる
   乙女心を、思ひみよ   この世ひとりの君ならで
  ああまた誰を頼むべき   君しにたまふことなかれ

                        2011/02/27    Prof. Kubo



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