知られざる宇宙の姿を透視する
ニュートリノ天体物理学宇宙への理解と、極微の素粒子の世界の理解
現代物理学に於いて、自然界の究極の要素としての素粒子の世界を追い求めていく努力がなされている。それと同時に自然界に働いている4つの力を統合して、究極的に唯一つの理論で全自然界を記述しようとする努力がなされています。
この対極にある巨視の世界、宇宙について考えてみると、地球、太陽系、銀河系、更には銀河系のような星雲が集まって出来ている星雲集団となるが、究極的に私たちの知りうる限りの全てのものを含んだものとしての宇宙を考えてみましょう。その宇宙の広がりは、素粒子の半径に比べて桁違いに大きいのです。(44桁以上も違う)
この巨視的世界を取り扱う、宇宙物理学・天文学と、極微の世界を取り扱う素粒子物理学
とは、どのような関係があるか、あるいはないのか考えてみましょう。
この途方もなく大きな宇宙への理解が、極微の素粒子の世界への理解とどのように密接に絡み合っていくのか。その様子を述べたいというのが、この小論の狙いのなのです。
皆さんは、ニュートリノという言葉を聞いたことはあるでしょう。あらゆる物質を通り抜けてしまう、なんと地球まで通り抜けてしまう不思議な粒子ニュートリノです。
これを観測することによって、今まで見ることができなかった宇宙の奥の奥まで見ることができるようになったのです。この物理学の領域がニュートリノ天体物理学です。この分野を中心となり切り開いてきたのが、2002年ノーベル物理学賞を受賞された、東京大学
名誉教授小柴昌俊先生です。
小柴先生が東大の大学院の時代、理論物理の山内孝彦先生の研究室で勉強されたそうです。その山内先生が東大を定年退官後、上智大学理工学部物理学科の教授として来られ、
小生は学生として先生の量子力学の講義を受けたものでした。
話をもどします。小柴先生が中心となり開発した研究施設が、
岐阜県神岡鉱山跡に建設し、1980年代から観測を始めたカミオカンデです。この施設は
東京大学宇宙線研究所の神岡宇宙素粒子研究施設としてつくられ、鉱山跡地下1000mに
超純水3000tを蓄えたタンクと、その壁面に設置した1000本の光電増倍管により宇宙から飛来する、ニュートリノの検出、陽子崩壊の実証、重力波の研究等行っている、国際共同研究施設としての役割を果たしてます。現在は第二世代のスーパー・カミオカンデの時代になっています。第一世代のカミオカンデの観測において、重要な発見があったのです。
1987年に、大マゼラン星雲で発生した超新星爆発に伴う、ニュートリノの観測に成功。
超新星(Supernova)爆発とは、大質量の恒星がその一生を終えるとき起こす、大規模な
爆発のことです。この爆発により軽いニュートリノが宇宙にばら撒かれるのです。
この観測成功により、ニュートリノ天体物理学の開拓に繋がり、ノーベル物理学賞受賞へと繋がっていったのです。
これにより、巨視的世界を取り扱う宇宙物理学・天文学と、極微の世界を取り扱う素粒子物理学とが、あらゆる物質を通り抜けてしまう不思議な素粒子ニュートリノを観測する
ことにより、今まで見ることができなかった宇宙の奥の奥まで見る事が出来る様になったと言われています。例えるならば、人体の内部を見るX線の役割になるのではないかと
思います。
私は前回、“自然科学者の視点から見たインド哲学”、
” India Philosophy from the view Point of a Natural Scientist”
という小論を発表しました。
そこでは、現代物理学における二つの大きな流れ、極微の世界を極めようとする、
量子力学・素粒子物理学と、対極にある巨視的世界を扱う相対論、宇宙論について考えてみました。
一方、今取り組んでいるインド哲学について、宇宙の根本原理ブラフマンと自己の内なる
“真の我”アートマンとの合一を目指すインド哲学につき考え、その上で現代物理学の
目指す方向性とインド哲学の目指す方向性との相似性について論じたものでした。
それに対し今回の小論は、あらゆる物質・地球さえも通り抜けてしまう不思議な粒子
ニュートリノを観測することで、いままで見ることができなかった宇宙の奥の奥まで、見ることができるようになったニュートリノ天体物理学について、即ち、現代物理学における極微の世界と巨視の世界、更には宇宙の根本原理を解明かそうとする物理学者の努力について説明したものです。この分野で日本の物理学者が、中心的役割を果たしていることに、誇らしい思いがします。
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